Linuxで使える動画編集ソフト(その2)
以前書いた動画編集ソフトの紹介 の続きです。前回は kino, Avidemux, Stopmotion, PiTiVi を紹介しましたが、今回は kdenlive, OpenMovieEditor, LiVES を紹介します。
今回紹介するソフトは、前回のものとは異なり、いずれもマルチトラック編集ができるソフトです。あと、最後に動画編集ソフトではありませんが、関連する重要なライブラリの紹介もします。
kdenlive
http://www.kdenlive.org/screenshot.php
- KDE環境用に作られたノンリニアビデオ編集ソフト
- Gnome環境であっても動作は可能。ただし、KDE系のライブラリを幾つか必要とするので、ディストリビューションのパッケージ管理ソフト(aptやyumなど)を使って依存関係を解決させないと面倒。
- マルチトラックに対応し、シーン切り替えの効果も複数用意されている
- シーン切り替えの効果を付けたい場合、それぞれシーンの動画を別のトラックに、一部が時間的に重なるように配置して、その重なった部分にトランジッション効果を付加する形になる
- タイトル文字などを重ねることもできるが、Picture in Pictureのような表現は苦手(PinPはトランジッション効果にはあるが、それを使ってしまうと「子動画へのトランジッション」とみなされて、親絵が消えたりと、変な動きをする)
- オーディオトラックも多トラック編集可能
- UIは癖が無く、かなり素直(さすがKDE)
感想
- 安定性がイマイチ
- 操作中に突然落ちることが多かった
- 落ちても、その直前の状態をバックアップしてくれているのでデータを失なうことは少ないのです
- 静止画などをトラックに配置する際、クリップの幅が0(もしかしたらマイナス?)として追加されてしまって、不可視で操作不能なクリップが出来てしまうことがあるという致命的な不具合に何度か遭遇しました
- 一度こうなってしまうと、確実に有効な復帰方法はないような気がします
- 操作中に突然落ちることが多かった
- 安定性を除けば、誰にでも勧められるナンバーワンソフトなんですが……
OpenMovieEditor
http://www.openmovieeditor.org/
- マルチトラック編集が可能な動画エディタ
- 「複数の素材を重ねる」ことをしっかりと意識した設計
- 動画の始め数秒にタイトル文字をかぶせる、とか、特定のタイミングで効果音を足す、といったことが直感的に実現可能
- 入力、出力共に、扱えるフォーマットの幅が広い
- Ubuntuのリポジトリに入っている(universe: コミュニティサポート)
- インターフェースのデザインが古臭い、というか、普通のアプリとは異なる独特な操作感。良く言えば、いかにも業務用って感じ
- 基本マウス操作のみ
- 数値直接入力ができない所が多い
- 全ての操作がメニューからたどれるわけではない(というより、メニューに無い操作が殆ど)
- 安定性は結構良い
- 入力データに問題があった場合を除けば、試用中に落ちることは無かった。
- 同一トラックに複数の動画を、一部が重なるように配置すると、重なった部分はクロスフェードによるシーンチェンジになる
- シーン切り替えの効果はクロスフェードのみ。それ以外の効果はエフェクトやフィルタを駆使すれば出来るが面倒。
- 標準で入っているエフェクトの数は少ないが、FreiOrというビデオエフェクトプラグインに対応しているため、それをインストールしておけば実用上十分なエフェクトが使える
- オーディオトラックも複数持てる
- Waveの波形が出るので、SEの追加もやりやすい
- Volume Automations エフェクトを使えば、「最後の2秒でフェードアウト」などといった指定も容易
感想
- 独特のインターフェースに慣れることが出来るなら、現状でベストの選択肢の一つ
- 安定性が高い
- 真っ当なマルチトラック対応をしているので、紙芝居が素直に扱えて、画像を重ねたり音を重ねたりが簡単にできる
- UIが日本語化されてない……のは良いにしても、日本語のファイル名などが化けるのは若干困るし、タイトル等のテキストも日本語不可なのは辛い。
- しばらく悩んだんだが、どうもカットはキーフレームでしか出来ないっぽい。元素材によっては何秒間もキーフレームが無いこともあるので注意。
- ここ最近でも精力的に開発が進んでいるようなので、開発が進めばさらに化ける可能性アリ
今回の動画制作で使用した箇所
LiVES
特徴
- AVI編集 兼 VJ ツール
- VJ的に、動画を再生しながらリアルタイムに動画切り替えなどのパフォーマンスができる。また、それを記録しておいて、後から調整を加えた上で新規の動画としてエンコード、といった流れで動画制作が出来る
- VJって何? って人はこちらをどうぞ http://jp.youtube.com/watch?v=SVf4g6v_3R8 これはLiVESで作成された動画だそうです
- エフェクトは OpenMovieEditor と同様 FraiOr が使えます
- もちろんAVIの編集ツールとしても一通りの物をそなえている
- 素材動画のカット編集やトラックに素材を逐次並べて一本の動画を作ることができる
感想
- 個人的には、「素材動画の横幅の2倍+α」以上の画面解像度じゃないとデスクトップからはみ出すUIはなんとかしてほしかったところ。
- そのため、あんまり長時間試用してません
- VJをやる人には事実上唯一の選択肢
- 大方の予想通り、結構なPCスペックを要求する
- 普通の動画編集ツールとして見ても及第点
忘れちゃいけないライブラリ
これまでに紹介してきたような動画編集ソフトは、動画の読み込みや書き出し、またエフェクト追加用に、外部のライブラリをサポートしていることがあります。動作に必須な物はインストール時に間違い無くインストールされるので良いのですが、無くても動作するようなオプショナルなライブラリだと忘れられがちです。対応フォーマットやエフェクトの数が少ないと感じたら、ライブラリのインストール忘れを疑ってみてください。
以下に、忘れられがちなライブラリを思い付く限りざっと挙げてみます。
- ffmpeg(libavcodec, libavformat)
- 世の中の大抵のCODECとファイルフォーマットに対応できるライブラリ
- ちなみに、Ubuntuの標準のリポジトリに入っているlibavcodecは、リスキーな(特許などでヤバい可能性のある)codecを殺してあるライブラリなので、対応フォーマットは少なくなっています。必要がある人はMedibuntuの利用を検討しましょう。
- libogg, libtheora, liborbis
- OGG(OGM)動画のファイルフォーマットと定番codec
- libfaac, libfaad
- lame
- MP3エンコーダ
- flac
- Free Lossless Audio Codec
- kinoplus
- kinoのエフェクトプラグインパッケージ
- FreiOr
- OpenMovieEditorやLiVESが対応している画像エフェクトライブラリ
ちなみに、上記のライブラリの殆どは、単にライブラリを呼ぶだけのフロントエンドとなるコンソールツールがあります。特に動画を扱う上ではffmpegのお世話になることが多いでしょう。
私の場合、今回ニコニコ動画に投稿した動画はOpenMovieEditorで作成しましたが、一旦、高ビットレートのAVIで出力しておいて、以下のコマンドを使ってMP4(AVC)に変換しました。これは、ニコニコ動画のサーバーで再変換されると、文字が潰れがちになるので、その回避のためです。
$ ffmpeg -i movie.avi -vcodec h264 -r 15 -s 512x384 -b 400000 -acodec aac -ar 44100 -ab 64 movie.mp4
まとめ
結局、2回に渡って長々と色々なソフトを紹介してきました。
個人的には、完成度の点では OpenMovieEditor、UIデザイン的にはkdenliveが気に入ったのですが、いずれも完璧なソフトというわけではありません。
結局のところ、「これを使っておけば全てOK!」と言えるような決定版が無いのが、フリーのLinux界の現状のようです。
そんな現状を認識してしまうと、「動画編集ソフトを作りたい!」という衝動にかられてしまうのですが、とてもそんな時間は確保できそうにないので自重するしかありません(;;)