ダビング10が始まらない本当の理由

6月2日に開始するとされていたダビング10ですが、いよいよもって、延期or中止されることが確定したようです。(「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (1/2) - ITmedia NEWS)

以前から、ダビング10への移行のためには、十分な告知と従来機器の一斉のファームウェア更新が必要なことから、既に6月の開始は不可能と言われてはいたのですが、ここまでグダグダな状態のまま期日を迎えるというのは若干予想外でした。

権利者側は「我々はダビング10を始めさせてあげたいのに、メーカーが意固地になってる。」と言い、一方、メーカーだとかJEITAだとかは「権利者側がダビング10を人質にiPod課金をしようとしている」と言っているわけですが、結局のところどちらも「私達は消費者の見方です」と言い張りつつ我を通しているように見えます。おたがい譲れない一線での綱引き。単純に見るとそうとしか見えませんが、そうではないかもしれません。

「メーカーの中に、ダビング10を6月2日にスタートしたくない人でもいるのだろうか。『文化庁案に沿ってバランスの取れた解を模索する』というのは、メーカー間のバランスを取るという意味だったのか」と菅原さん

「ダビング10を人質になどしていない」「メーカーは“ちゃぶ台返し”だ」 権利者団体が会見 (2/2) - ITmedia NEWS

上記は、メーカー側を皮肉った権利者代表の方のコメントですが、実は本当に「ダビング10をスタートしたくない人がいる」っぽいのです。

http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080528/zooma362.htm

こちらは、小寺さんによる、ソニーのBDレコーダーのインタビュー記事です。この機種は、レコーダーで録画した動画を手軽にウォークマンPSPなどに移して試聴できる「おでかけ転送」という機能があります。コピーワンス動画の場合、ウォークマンに「コピー」するわけにはいかないので、名目上は「移動」の扱いになり、転送した動画はレコーダーでは見れなくなります。ただし、実際にはユーザーに見せないだけで、HDD内にオリジナルを隠し持っているので、「おでかけ」していた動画を「おかえり」(つまり、ウォークマンから消したことをレコーダーが認識)すれば、元通り、レコーダーを使ってハイビジョン画質で見れるというわけです。

ダビング10が使えるようになると、「おでかけ中にはレコーダーでは見れない」という制限が無くせるので、記事のタイトルにも入っている通り、ダビング10が有効に働く珍しい例です。

さて、この記事の最後に、小寺さんが強烈な毒を吐いています。

ダビング10のメリットは、Blu-rayが沢山焼けますということではなく、こういう外部機器への転送で使い勝手が上がることだ。ただ事実上これを実現しているのは、家電メーカー内でもソニーだけしかない。ソニーには自社製の動画対応のポータブルデバイスが各種あり、かつて音楽で使用していたDRMを映像用に転用することで、独自DRMを持つことができた。事実上ダビング10が始まれば、この分野ではソニーの一人勝ちとなる。

新聞報道では、JEITA側が補償金を飲まなかったので、予定通りダビング10が始められないとする記事が多い。しかしそれ以外にも、ソニー以外のメーカーが、ソニー同様のソリューションが準備できるまで時間を稼ぎたいという思惑もあるのではないだろうか。

今後、ダビング10の開始時期と、各メーカーのレコーダが携帯電話などへの転送機能を実装するタイミングを注意深く観察していくと、本当は何が問題だったのかがわかるかもしれない。

http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080528/zooma362.htm

なるほど。

ソニーの独壇場となる事を快く思わない他のメーカーがあえてちゃぶ台返しをしかけてきた、というわけですね。

確かにそう考えると、すべての辻褄が合ってしまうのですが……。信じたくは無いなぁ。